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ベトナムコーヒーは「量から質」へ:スペシャルティとファインロブスタの現在地

世界第2位のコーヒー生産国ベトナムは、長く「ロブスタ中心の大量生産国」というイメージで語られてきました。年間180万トンを超えるコーヒーの多くが、インスタントコーヒーやブレンド用の原料として世界中に輸出されてきたのも事実です。

一方で近年、中部高原を中心にアラビカのスペシャルティや「ファインロブスタ」と呼ばれる高品質ロブスタが台頭し、ベトナムコーヒーは「量から質へ」という新しいステージに踏み出しつつあります。このページでは、ダラット・ラムドン・バオロク・ディリンなど中部高原で進んでいる変化を、私たちの現地での体感も交えながらご紹介します。

中部高原がベトナムコーヒーの「心臓部」

ベトナムの主要コーヒー産地(ダクラク・ラムドン・ダクノンなど中部高原)を示した地図
ベトナムの主要コーヒー産地(中部高原タイグエン地方)

ベトナムのコーヒー生産は、その約8割が中部高原(タイグエン地方)に集中しています。なかでもダクラク省・ラムドン省・ダクノン省の3省だけで国内生産量の約8割近くを占めており、ラムドン省はロブスタで約25.8%、アラビカでは約41.8%を担う一大産地です。

標高1500m前後のダラット周辺はアラビカに適した冷涼な気候で、「ベトナムの軽井沢」「花の都」と呼ばれるほど涼しく、果物や花の栽培と並んで高品質なアラビカコーヒーが育っています。一方、ラムドン省のバオロクやディリン周辺は、標高・気温・土壌のバランスが良く、ロブスタとアラビカを組み合わせた多様な栽培が行われている地域です。

私たちが足を運んでいるのも、まさにこの中部高原の産地です。ダラットではアラビカを中心に、ラムドン省バオロクやディリンではロブスタとアラビカの農園を継続的に訪ねており、私たちが日本でお届けしているコーヒー豆も、こうした農園で育てられたものです。

ファインロブスタという新しいカテゴリー

「ロブスタ」と聞くと、「苦くて重い」「インスタント用の安い豆」というイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし近年、国際機関CQI(Coffee Quality Institute)が定める基準で80点以上を獲得するような、高品質のロブスタが「ファインロブスタ」として世界的に注目されています。

ベトナムでも、ロブスタ種だけで世界全体の約4割を生産するという強みを背景に、量だけでなく質で評価されるロブスタづくりに挑戦する農園が増えています。中部高原の一部では、発酵プロセスを工夫したナチュラル精製や、糖度を意識した収穫管理など、アラビカのスペシャルティと同じレベルのきめ細かい取り組みが行われています。

ラムドン省やダクラク省では、国際基準を満たしたスペシャルティ・ロブスタを評価する「ベトナム・アメージングカップ」などのコンテストも開催されており、近年の大会ではロブスタ部門の最優秀賞をラムドン省の農園が受賞するなど、存在感を高めています。

アラビカのスペシャルティも着実に成長

ロブスタのイメージが強いベトナムですが、アラビカのスペシャルティも着実に増えています。

標高約1500mのダラット周辺、アラビカ種に適した冷涼な高地の風景
標高1500m前後のダラット周辺はアラビカに適した冷涼な気候

とくにダラット周辺では、標高1500〜1600mの高地でウォッシュド処理を施したクリーンなアラビカが生産され、日本や欧米のロースターでも「ベトナムらしい新しい選択肢」として扱われ始めています。

フレーバーとしては、フローラルな香りややわらかな酸、ナッツやチョコレートのニュアンスなど、「ブラジルや中米とも少し違う、東南アジアの高地らしさ」が感じられるロットが増えてきました。ベトナム国内でも、こうしたアラビカのスペシャルティを提供するカフェが増え、若い世代のコーヒー好きを中心に支持を集めています。

トレーサビリティとサステナビリティの動き

品質向上と並んで、中部高原のスペシャルティ/ファインロブスタで重要になっているのが「トレーサビリティ」と「サステナビリティ」です。欧州を中心に、農園レベルまで遡れるトレーサビリティや、森林保全・水資源・労働環境に配慮した生産体制が求められるなか、ベトナムでも輸出企業や海外ロースターと組んだプロジェクトが増えています。

具体的には、次のような取り組みが、ラムドン省やダクラク省の一部農園で進んでいます。

  • 生産者ごとのロット管理と農園コードの付与
  • 農薬・肥料の使用履歴や収穫日・精製方法の記録
  • 日陰樹の導入や貯水池・スプリンクラーの整備など、水と土壌を守る設備投資
  • 子どもの就学支援やトイレ・住環境の改善

日本企業による支援プロジェクトも増えており、サステナブルな栽培に取り組む農家を対象に、技術指導やインフラ整備をセットで行う事例も出てきました。単に「高品質な豆を買う」のではなく、「環境と生活を守る生産モデルを一緒につくる」方向へのシフトが、ゆっくりとですが進み始めています。

ラムドン・バオロク・ディリンと私たちの取り組み

こうした変化は統計やニュースの上だけの話ではなく、中部高原の現場に立つとよりリアルに伝わってきます。

ラムドン省バオロクやディリンの農園では、小規模な家族経営の農家が多い一方で、収穫タイミングの徹底や選別工程の改善、乾燥場の整備など、スペシャルティ/ファインロブスタづくりに向けた工夫が少しずつ浸透してきています。

私たちはダラットでアラビカを中心に、ラムドン省バオロクやディリンではロブスタとアラビカの農園を継続的に訪ねており、日本でお届けしているコーヒー豆も、こうした農園で育てられたものです。その裏側には、収穫や精製の現場での対話や、長期的な買い付けを前提にした信頼関係づくりが欠かせません。

ベトナムコーヒーのこれから

ベトナムのコーヒーは、ロブスタ主体の大量供給国というステージから、「スペシャルティとファインロブスタで個性を発信する国」へと、長い時間をかけて変わろうとしています。中部高原のダラットやラムドン、バオロク、ディリンで進む取り組みは、その変化の最前線のひとつです。

COFFEEページでは、こうした現地の動きや農園の物語、日本での味わい方などを、引き続き少しずつご紹介していきます。一杯のベトナムコーヒーの奥にある風景や人々の努力を、みなさまにも感じていただけたらうれしいです。